草加市立歴史民俗資料館
○そうか昔話
茶屋通り・女体神社・中川の渡し・ムジナの恩返し・雷神様・火あぶり地蔵・素人相撲・狐の嫁入り・道陸神・うなぎ塚・夜泣き地蔵・十王堂・お日待・松並木の狐・毛長沼・江戸沼・魚屋河岸・いぼ地蔵・青柳姫・みそか市・雨になった龍・化け物店・長泉寺の狸・稲虫送り・宮沼弁財天・九左衛門新田
☆むじなの恩返し
新里村の屋敷の主人は、たいそう情け深い人だったので、村人から慕われていました。 屋敷の庭には大きなケヤキの木があり、主人はその木の洞に住み着いたむじなに、えさをあげてかわいがっていました。 むじなも、心やさしい主人になつくようになりました。 そのころ、恐ろしい盗人が近くの村を荒らし回っていました。 この盗人は、自分が生まれ育った新里村でだけは悪事を働くことはありませんでしたが、屋敷の主人は人々に迷惑をかけている盗人を捕まえる決心をしました。 このことが耳に入り、怒った盗人は、屋敷の主人を殺そうとたくらみました。 主人は屋敷の戸締まりをして、盗人にそなえました。 しかしある日の晩、とうとう盗人が屋敷に忍び込みました。主人は逃げようとしましたが、戸締まりがあだになって逃げられません。 ところがなんと、厳重に閉めたはずの雨戸の1枚が、開いているではありませんか。おかげで主人は、外に逃げることができました。 そのとき主人は、確かに見たのです。 暗やみの中に光る、やさしいまなざしを…。 主人を追いかける盗人も見ました。今にも襲いかかりそうな、怒りに満ちたまなざしを。 村人たちは「むじなが恩返しをしたのだ」と語り合いました。 この後、盗人は姿を消し、二度と現れることはありませんでした。
☆毛長沼
昔むかし、新里村には大きな沼がありました。 沼のほとりに住む村の長者には、女神のように美しい娘がいました。 ある日、沼をへだてた舎人村の長者の息子がこの娘を見そめ、結婚を申し込みました。 新里村の長者はこころよくこれに応じ、二人の結婚が決まりました。 ところが、結婚の日が近づいたころ、新里村に悪い病気がはやったのです。 そのうわさは舎人村にも伝わり、病気が広がることを恐れた村人たちは、長者に二人の結婚をあきらめるようにと願い出ました。 病気は一向におさまらず、死ぬ人も出たため、両家は結婚をあきらめることにしました。娘はそれを聞いて、たいそう心を痛めました。 悲しんだ娘は、ある嵐の夜、髪をふり乱しながら沼へと身を投げました。 新里村の長者は必死になって娘をさがしましたが、見つかりませんでした。 嵐が去り、新里村の病気もおさまったある日のこと。 対岸の舎人村に、長い黒髪が流れ着きました。 村人たちはその黒髪が、結婚がかなわず沼に身を投げた娘のものと知り、深く悲しみました。 新里村の人たちも、娘をいとおしみました。 そして沼のほとりに神社を建て、娘の長い黒髪をまつり、「毛長神社」と名付けました。
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