光明院
☆塩かけ地蔵
元禄年間というから、今から約三百年前のこと。大沢の農家与兵衛さんの家 に、次々と太った男の子が誕生したそうです。 初節句も無事にすみ、すくすくと育っていきましたが、ある日のこと、子どもたちは高い熱を出すと、そのまま意識をなくしてしまいました。 若い両親は、それまで経験したこともない病気に、すっかり気が動転し、ただオロオロとするばかりです。医者よ薬よと八方手を尽くして手当てをしましたが、一向によくなりません。おばあちゃんも、かわいい孫のこと、気がきではなく、あちこちの神や仏に祈りましたが、さっぱり治りません。 そんなある日、近所の人がこう教えてくれました。「大沢のお地蔵さんは、大層ご利益があるそうじゃ」 おばあちゃんはさっそく出かけて、「かわいい孫の病気を治してくれるなら、必ず塩断ちをいたします」と願かけしました。 塩のない生活をするのは、大層辛抱のいることだったのでその夜のこと、お地蔵さんがおばあちゃんの夢枕に立って言ったそうです。「三日三晩ののち、孫の病は治るぞや」すると、どうでしょう。 お告げのとおり孫はみるみる元気になりました。 おばあちゃんは、願かけの証(あかし)として三日分の塩を持ってお礼参りに出かけました。
大沢光明院のお地蔵さんに、塩を振りかけるのが習わしになったのは、それ以来のことだといいます。今では、お地蔵さんは、長い間に塩でとかされ、もとの形もわからないほどですが、それでも子どもの苦しみや悲しみが救われたためだと、醜い姿でも満足しているようにみえます。
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