久米仙人と久米寺
〇霊禅山久米寺
橿原市久米町502
☆久米仙人・久米寺
昔、大和国竜門寺に仙術を修行していた安曇と久米という二人の者がいた。 安曇はすでに仙術を修め一応自由に空を飛べていた。 久米もその後仙人となり空を飛べたが、吉野川のほとりに来た時、若い婦人が洗濯しているのを見た。 その内股が白く美しかったのでムラムラと欲心がおこり神通力を失い・その婦人の前にどすんとおちてしまった。 二人はこの後夫婦となった。
時の天皇は高市に都を造ろうと思い人夫を集めた。 久米仙もその賦役にかり出されたが、人夫達が彼を「仙人、仙人」というので監督官は「なんで仙人というのだ」と聞いた。 そこで彼が仙人になったいきさつを告げると、監督官は「まことに仙人なら材木をもち運ぶのに空を飛んでもって来るだろう」と冗談まじりに言った。 それを聞いた仙人は心の中で、「自分には多分もう神通力などはないだろう、しかしひょっとしたら一生懸命祈れば仏が助けてくれるだろう」と思い、監督官にやって見ようと言った。 そこで仙人は静かな修行場所に七日七晩一心不乱に祈りつづけた。 七日すぎても何事もなかったので監督官たちは久米仙を笑い疑った。 すると八日目の朝、空が急にくもり夜のようになり雷がひびきわたった。 やがて空が晴れると多くの材木が南の方の山から都を造るところに飛んできた。 このような有様で監督官たちは久米仙を伏しおがみ、天皇に奏上した。 天皇は三十町の田を賜った。 仙人は喜んでここに寺を建立した。 これが今の久米寺である。
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