池袋の下女
○池袋の下女(池袋の石打ち)
池袋から出てきた女を召し抱えたり・手を出したりすると、石打にあう・部屋の道具が飛び回る・そのた怪奇現象が起こるといわれた。
※池袋の産土神が怒り・祟りをなすとされた。
※池袋の女・池尻の女、ともいわれた。
☆池袋の女・池尻の女
……或る老人聞きて、もし池袋か、池尻辺の女を召使ひ給はずやと尋ねし故、召使ふ女の在所を尋ねしに、池尻の由申しければ、早速暇を遣はしけるに、其後は絶えて右の怪異なかりし由。 池尻村の産神は甚だ氏子を惜 み給ひて、他へ出もし其女に交りなどなす事あれば、必ず怪有りと聞伝へしと、かの老人語りける。 其頃、栄蔵は幼少なりしが、親なる著、右女を侵しける事も有りしやと語りぬ。(根岸肥前守「耳袋」巻二)
※下女に姦通すると、家内に異変が起こるといわれた。 よその地に結婚するのを妨げるためだったともいわれる。
※江戸町人は周辺農村に悪い印象を持っていたので、池袋村などから下女を雇い・むやみに手をつけると「石を投げられる」といわれた。
☆池袋の女
小日向上水端持筒組与力鍋五郎方で、池袋村百姓娘を下女として雇った。 女は、容姿端麗・てきぱき働き・礼儀正しく、馴染むにつれて鍋五郎は手を付けてしまった。
ある日の黄昏どき、物音に下女が勝手口に出るやいなや・叫び声を上げて駆け戻ったきた。 「手拭いで頬被りをした男が立っていた」と聞き、鍋五郎は辺り一帯を探したが見つからなかった。
その夜には屋根や雨戸に石が打ち付けられ、修験者を呼び祈祷するも怪事はより激しくなり、皿・砂鉢・片口・擂鉢・丼・善椀などが飛び交う日が続いた。 しかし、南隣猪狩大助の養父宗賀が「下女の祟り」と見破り、下女に暇を出したところ怪事は収まった。
下女は、秩父三害(生団子・ネブッチョウ、お崎狐)の一つお崎狐遣いの子孫だったといわれる。
※遊歴雑記・巻四の上
☆池尻の女
寛保延享年間のころ大竹栄蔵家では、天井上に石が落ちる音がし・行灯が飛び交い・茶碗などが飛び回る怪事が続いた。 下女を調べると池上の女であり、暇を出すと怪事は収まった。
池尻の産神様はたいそう氏子をいとおいみ、多地でその女と交渉を持てば・必ず妖怪現象が起こるといわれた。
※耳嚢・巻之二
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