群馬での暮らし:宝手拭い
《グンマを話そう》
宝手拭い
ある昔、村にみすぼらしいお坊さんがやってきました。 手にはフチの欠けた赤い椀を持ち、お経を唱えながら村一番の大尽家へ立ち寄りました。「どうか米をめぐんでくだされ」と言うと、その家のおかみさんが「乞食坊主にやるもんなんかない、さっさと消えろ!」と追い返してしまいました。
これを見ていた奉公娘は「私の食べるものでよかったらどうぞ」と言って、自分の昼飯を全部食べさせました。 お坊さんは大変喜び、首に巻いていた汚手拭いを渡し「毎日これで顔を洗いなさい」と言って立ち去りました。 次の日娘が手拭いで顔を洗うと、色白になりました。 二日目、鼻が高くなりました。 三日目、眼がパッチリと大きくなりました。 こうして、奉公娘はすこぶる器量よしとなりました。
これを知ったおかみさんは羨ましくてしかたがありません。 次の年、再び坊さんがやってきたので、おかみさんは坊さんに無理矢理頼み込みました。 坊さんは「こんな立派な家のおかみさんに汚手拭をあげるわけにはいかない」と言って懐から新しい手拭を出しておかみさんに渡しました。 次の日おかみさんが手拭で顔を洗うと、顔が赤くなりました。 二日目、鼻が低くなりました。 三日目、しわだらけになりました。 こうして、おかみさんはすっかり猿顔になってしまいました。
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