馬の骨
事例1:
藤原栗沢部落では、温泉に馬の骨を投げ入れたため、温泉が枯れてしまった。 代わって宝川湯の花に温泉が湧き出た。
事例2;
吾妻名久田村では、忙しすぎた女中が温泉に馬の骨を投げ入れたため、熱い湯であった温泉が「ぬる湯(大塚鉱泉)」となった。
事例3:
嬬恋村三原湯窪では、里の者が温泉によくないことをしたため、薬師様が怒り温泉を取り上げ、草の葉に包んで北方へ放り投げてしまった。 この草の葉が「くさつつみの湯」であり、今の草津温泉である。
事例4:
荒砥村では、酒の湧き出る清水に馬の沓を投げ入れたため、ただの清水になってしまった。
事例5:
藪塚では、あし毛の馬が飛来し・一声いななくと・雲を呼び雨を起こして天空高く舞い上がり、温泉は冷泉となってしまった。
事例6:
湯原の繁昌で待遇が悪くなった女中が損馬の骨を源泉に投げ入れたため、湯原の湯が沢渡へ移った。
事例7:
前橋原之郷・庚申川のほとりに弘法大師が杖で地面を突いて温泉を出したが、病人が集まるのを嫌った村人が馬の骨を投げ入れて温泉を止めてしまった。
事例8:
前橋・湯之気曲輪には温泉があったが、屍馬を投げ入れたので水になった。
事例9:
水上・向平の温泉は、酷使された女中が損馬骨を湯に投げ入れたので、湯が谷川へ逃げてしまった。(湯善薬師)
温泉源などに投げ込むと、霊験の温泉に異変が起こるのであった。
※群馬にとって文字通り「馬」は大切なものであり、信仰・伝説・禁句・諺・俗信・行事など多数ある。
☆ソンマボネ
損馬骨(死馬骨)のこと。 素姓の知れぬ人、「どこの馬の骨」よりキツイ表現。
○馬の沓
蹄鉄など無かったので、藁で馬の沓を作った。(スペアも持って歩いた)
☆死馬の骨を買う
古く中国で、千金を持って名馬を買いに行った家来が、死んだ名馬の骨を五百金の高値で買い帰ってきた。 これを知った王は怒り狂った。 そしては、一年も経たぬうちに、名馬三頭を手に入れた。 「死んだ名馬に大金を出すぐらいだから、生きた名馬ならもっと高く買ってくれるだろう」との噂が広まったのであった。
☆損馬の骨を源泉に投げ入ると湯が止まる。
これは、古事記の天岩戸に由来する
※天照大神が機屋で神に奉げる衣を織っていたとき、建速須佐之男命が機屋の屋根に穴を開けて・皮を剥いだ馬を落とし入れたため、驚いた一人の天の服織女は梭が刺さって死んでしまった。 ここで天照大神は見畏みて、天岩戸に引き篭った。 高天原も葦原中国も闇となり、さまざまな禍が発生した。
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